前置き
国内外でのヒプノセラピーに関する研究のご紹介です。
催眠の研究は50年以上前から行われており、しっかりとした結果が出ているということをこれらの研究内容から知っていただければと願っています。
心身の症状には、潜在意識(感情や刷り込み)が影響していることが多く、よって潜在意識にアプローチすることで症状が自然と軽減されるということが見られますが、治療にとって代わるものではありません。
とはいえ、意識が身体に与える影響がどれだけ大きいか、心身を分けて考えることはできないということが明らかではないかと思います。
文献内容
日本心身医学 34(4), 329-333,1994
石元 順子、松岡 洋一、青木 宏之、手嶋 秀毅、中川 哲也
概要
食品アレルギーの中には心理的要因が強く影響していると思われる症例が存在することはすでによく知られています。それらの症例では、不安や恐怖の存在が系統的脱感作による症状の軽減を妨げることがあります。
これは、食物アレルギーに関連した元夫に対する恐怖や怒りが除反応として現れた後に、催眠下での系等的脱感作が効果的に働いた食物アレルギー患者に関する報告です。 52歳の女性患者が魚を食べた後の蕁麻疹で当病院に入院されました。症状は入院6ヶ月前から始まりました。単盲検法による負荷試験を行い、魚が蕁麻疹の原因と思われたものの一貫性のあるデータは取得できませんでした。
催眠下で系統的脱感作を行いましたが、セッション中に魚のイメージに対する抵抗が見られ始めました。セラピストが催眠下でその理由を尋ねたところ、患者は子供たちが再婚してほしいと願っている元夫を思い出すからと答え、涙ながらに元夫が患者にしたことを非難しました。この除反応の後、患者は脱感作プログラムにおいてさらに進むことができました。入院直後に行われた各種の魚に対する皮内反応は陽性でしたが、治療後は陰性になり、魚を食した後も蕁麻疹は現れませんでした。また、患者は元夫と再婚しないことを決断し、問題なく退院しました。
結論:これらの発見は、脱感作中に進展が見られず、症状が残っている場合、除反応としての感情表現が改善への一歩になり得ることを示唆します。また、除反応がこの患者のアレルギー反応を軽減し、現実に対する態度を変えるきっかけにもなったようにみられます。
感想
日本で1994年に発表された論文になります。私自身幼少期から、当時はあまり知られていなかったアトピー性皮膚炎、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎などを患ってきました。
高校を卒業して渡米した途端に、全ての症状が消失し、帰国するまでの間の13年間、症状が現れることはありませんでした。一時帰国するたびに、成田で降機した瞬間に症状が出始めていたので、当時は「日本にアレルギーなのか?家族にアレルギーなのか?」などと冗談半分に思っていましたが、精神状態、自分の気持ち、感情が身体に大きく影響を与えることを初めて体感した時期でもありました。
ホメオパシーを勉強し始めて症状が消失した時も、身体的にも精神的にも楽になった頃でしたし、脱ステで苦しい数年を費やした時も、本格的に楽になり始めたのは顕著な意識の変化が見られ始めた後でした。
心や意識の状態がどのタイミングで、どういう形で、どの程度、身体に現れるのかは人によって異なると思いますが、このような研究結果でも感情と症状との関連性が裏付けられていることが分かりますね。
ヒプノでの系統的脱感作・減感作は、実は恐怖症などに非常によく使われます。というのも、私たちの記憶というのは、動画のように正確に保存されるものではありません。その経験のイメージとその時の感情がペアになって関連づけられ、動機付けられて保存されます。そのイメージと似たもの・状況に遭遇すると、その時の感情が湧き上がったりします。
皆さんもそういう経験がきっと数多くありますよね?子供の頃に可愛がっていた子犬と同じ犬種の子を見たりすると、昔一緒に遊んだ時の楽しいワクワク感を感じたり・・・
でも逆に子供の頃に犬に噛まれた経験があったら・・・犬を見るたびにその時の恐怖感がいまだに戻ってくる人もいることでしょう。しかも、小さな子犬にさえ恐怖感を感じる人も中にはいることでしょう。これは、時間の経過とともに「関連づけ」がどんどん広がって、過剰に反応するようになってしまったからです。
この関連づけが広がってしまうことで、本来安全で無害なものにさえ、過剰に反応してしまうこともあります。広場恐怖症は、このどんどんと拡大した関連づけによって引き起こされると考えられています。恐怖症に関する研究内容もまたの機会にご紹介しましょう。
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