私たちが経験している問題は、過去の経験に起因していることが多いですね。例えばステージ恐怖症。子供の頃に人前で恥ずかしい思いをしたというような経験から、人前に立つことが苦手になったという方も多いのではないでしょうか?
もちろん、原因となった出来事を覚えている場合もあれば、覚えていない場合もあると思いますが、覚えていようといまいと、ヒプノセラピーで容易に問題を解決することできます。
今回は、原因となった出来事を覚えている場合にとても有効なツールの一つをご紹介します。
スクリプト
前回の動画では、幼少期などの過去の経験からくる問題を退行催眠をすることなく解決できるとお伝えしました。
今日は、そのツールの一つをご紹介したいと思います。現在抱えている問題の原因が、過去に起きたある出来事、一連の出来事に起因しているとご自身が感じるときに活用できるツールで、「ヒプノドラマ」と呼ばれます。そう、催眠ドラマです!
今までも何度か、記憶というのはビデオテープに録画されるように脳に保存されているわけではないとお伝えしてきました。人は、物事を360度全ての角度から見たり経験したりすることはできないので、あくまでも自分の視点から、自分の立場から見て、経験したことを自分なりに解釈し、そのイメージに対して感じた感情が紐づいて保存されます。
そして、似たようなイメージに出くわすたびに、紐づいた感情が沸き起こり、その感情に基づいた言動をついとってしまうわけです。であれば、その問題を解決するためには、イメージと感情の紐付けを変えれば良いのであって、全ての事実関係を洗いざらい振り返る必要はないということになります。
事実、ヒプノセラピーでは、原因となった出来事、事象を知らなくても問題を解決することができます。つまり、ご自身が原因となった出来事や事象を思い出せなくても、またはヒプノセラピストに伝えたくないとしても、問題を解決することは可能だということです。このお話は次のエピソードでお伝えします。
さて、このヒプノドラマですが、原因となった出来事を覚えているということは、関わっている人も覚えているわけですね。ですので、催眠状態に入った後に、その人たちと対話をするという方法をとります。
例えば、人前に立つのが怖くなったのは、子供の頃の学芸会で、セリフを忘れてたじろぎ、恥ずかしくなって舞台から逃げてしまった。さらには、見にきてくれていたお母さんがそんな自分を恥ずかしく思ったり、情けなく思ったりしているように感じてしまったことが原因としましょう。失望感、恥ずかしさ、悔しさ、悲しさ、自分への怒り…などいろんな感情を感じたかもしれません。この状況がとても強い印象を残したとしたら、「人前に立つ」とか「発表する」というイメージに対して、「恥ずかしい」とか「悔しい」とかの感情が紐づいて根付いてしまう可能性があります。
そうすると、その後に似たような状況に遭遇すると、たとえば授業中に発表するなどそこまで大きなイベントではなくても、そのイメージに紐づいた感情が湧き上がってきます。そして、似たような状況に遭遇するたびに、その紐付けは強化、補強されて、時間の経過とともに、「人前に立つことを考えただけでも動悸がする」などという極端なことにもなり得るわけです。
さてヒプノドラマでは、催眠状態に入った後に、その頃の自分を想像してもらいます。当時の学芸会での状況に戻るのではなく、3年生とか、10歳ぐらいとか大体の年齢の頃の自分が、ニュートラルな、気持ち穏やかにいられる場所にいるところを想像してもらいます。そして、その場所でこの場合であればお母さんと対話をします。その当時とても恥ずかしく感じて、逃げ出すしかなかったこと、そしてお母さんがすごく失望して、恥じているように感じたことなどを伝えたり、また、「がっかりした?」「私のこと、恥ずかしく思った?」など聞きたいことを聞いてみたり。それに対してお母さんはどう反応するでしょう?もしかしたら、想像の中のお母さんは、「がっかりも恥ずかしくも思わなかったけど、あなたがどれだけやるせ無い気持ちだったか、想像するだけで辛かったよ」「頭が真っ白になることもあるよね。誰にでも起きえることだしね、大丈夫。次はうまくいくから」なんて言ってくれるかもしれません。そんなお母さんの言葉を聞いて、湧き上がってくる思い、感情はどんな感情でしょうか?もしかしたら、「あ〜、お母さんは私のこと恥ずかしいなんて思ってなかった」と安心したりするかもしれません。大切なのは、感情のレベルで納得すること、気持ちが変わることです。
もちろん、これらは全て、ご自身の潜在意識の中で、想像の世界で起きることですので、セラピストはあくまでも、「言いたいことを伝えてみましょう」「聞きたいことがあれば聞いてみましょう」「お母さんは何か言っていますか?どんな様子ですか」など、自由な対話を促すだけです。また、記憶の道に入らないように、つまり学芸会の状況に戻らないよう、モニタリングもしています。
もうお気づきかもしれませんが、これもイメージ療法・イメージングの一つなんですね。そして、今までにもお伝えしてきたように、潜在意識は現実と架空の区別がつきません。あくまでも、イメージとそれに紐づく感情に基づいて、自分を守るべく反応しているわけですので、このような対話を通じて、溜まっていた感情、紐づいていた感情を流し、手放して、よりポジティブな感情に置き換えることができます。この例では、人前に立つというイメージに対する紐付けが変わるわけです。例えば、「恥ずかしい」「笑われる」という不安や恐怖から、「次に頑張れば良い」「自分の価値は変わらない」など安心感に変わるかもしれません。
様々なイメージングの種類がある中の一つであるヒプノドラマですが、原因となった出来事や事象がわかっている際に必ず使うわけではありません。その方の性格や考え方に合わせて、適切なツールを活用します。
いかがでしたでしょうか?次回は、記憶がない、または記憶はあるけれどもそれについて口にしたくないというような場合について、実例を挙げてお伝えします。
コメント