エピソード32 退行催眠と前世療法 | ヒプノセラピーのアンダーセンス
English

エピソード32 退行催眠と前世療法

記憶の仕組み ヒプノセラピー 催眠療法

ヒプノセラピーというと、退行催眠や前世療法と思われる方も多いのではないでしょうか?

アンダーセンスでは、退行催眠は「リスクが高い」として行いませんが、前世療法はイメージング(イメージ療法)の一種として必要に応じて行います。今日は、この退行催眠と前世療法についてです。なぜ退行催眠はリスクが高いとされているのか、なぜ前世療法は問題ないのかについてご説明します。

スクリプト

ヒプノセラピーというと、退行催眠や前世療法と思われる方も多いのではないでしょうか?少なくとも日本ではそのイメージが非常に強いようです。

今日のトピックはもしかしたらちょっとした物議を醸し出すかもしれませんが、この退行催眠と前世療法についてのお話です。

まず、アンダーセンスでは退行催眠は行いません。私がヒプノセラピーを学んだ母校、HMIは、世界でも類を見ない、インターシップを含む720時間の教育を1年間かけて行うヒプノセラピーの専門学校です。現在では2年目が設立され、ロサンゼルス近郊のパシフィカ大学院を含む大学院教授陣が教鞭をとるマインドボディ心理学も提供されていますが、このHMIでは退行催眠はリスクが高いとして禁止されています。

まず、潜在意識とはイメージとそこに紐づく感情が保存されているということは、このブイログの視聴者の方はすでにご存知かと思います。つまり、過去の記憶がビデオのように起きた内容が時間軸で綺麗に保存されているわけではないということです。

皆さんも、幼少期の思い出を家族で話している時に、人によって覚えている内容が真逆だったりしたことはありませんか?

そもそも人間は出来事を360度全ての角度から見ることはできません。あくまでも自分の視点で、自分が経験した内容を主観的に捉え、解釈し、そこにその時感じた感情が合わさって記憶に残ります。ビデオテープのように保存していたら脳の容量をあっという間に超えてしまいますので、メインのイメージに対して自分の解釈、感情をくっつけてペアにして保存しているイメージです。

これだけでも「記憶」には精度の問題があるということがお分かりになるのではないでしょうか?

退行催眠はリスクが高いと言われている所以はここにあります。虐待の問題なども多く、またヒプノセラピーも日本よりはるかによく使われているアメリカだからこそわかったことかもしれませんが、退行催眠では、セラピストの誘導で特定の年齢や、時期に催眠中に戻るということを行います。が、この時、せラピストの質問の仕方、表現などによって、クライアントが暗示を受けた内容をイメージしてしまい、実在しなかったトラウマの記憶を作ってしまったという数多くのケースが見られたのです。

問題は、クライアントにとってはそのイメージが「記憶」になってしまい、自分自身を虐待の被害者だと思い込み、それによって加害者が生まれてしまったということです。

アメリカ・カリフォルニア州の法律は、証人に対してヒプノセラピーを活用する場合は、催眠状態に入る前に記憶している内容についての追加的情報などのみに利用できる、催眠前の記憶の内容は書面、音声、録画などで保存されてある、セッション前・中・後の一連のプロセスが全て録画される、証言が採用される前に聴聞会が行われ、証人の催眠前の記憶の信憑性が落ちる、催眠前の記憶に対する反対尋問が難しくなるなどの形で催眠が影響していないということを明確、かつ説得力のある証拠が認められる必要がある、など、数々の厳しい制限があります。意図していようといまいと、操作された記憶により冤罪が生まれては大変ですから、当然といえば当然です。これらの厳しい条件が必要なほど、退行催眠の記憶の信頼性は低いということです。

また、幼少期の問題など、退行催眠をしなくても十分にお悩みや問題を解決することができるということもわかっているため、リスクの高い退行催眠をする必要もないわけです。

さらには、トラウマなどの辛い記憶を無理に思い起こさせることで、トラウマの再体験になり問題が大きくなるという可能性もあります。記憶にないこと、思い出せないことは、基本的に理由があります。思い出してしまったら到底、抱えきれない、対処できないと本能的に判断された時には、自分自身を守るために、日々の生活を続けられるように、記憶の奥深くに封じ込めてしまうということをします。準備ができていないのに、無理にそれをこじ開けようとするのは、賢明な方法ではありません。このような根深い問題は、本人の準備ができた時、受け止めることができるようになった時に記憶が戻ってくることもあります。

次に前世療法についてですが、前世療法では、体験するイメージが真実かどうかは問題ではありません。それを「記憶」として信じるか信じないかはその人の判断なので、そこにリスクはありません。ですので、退行催眠よりはるかに安全な方法と言えるでしょう。

時々、前世療法がとても特別な療法のように言われることがありますが、実際は特に特別なものではありません。こういうと、がっかりされてしまうかもしれませんが、アンダーセンスでも頻繁に活用しているイメージング、イメージ療法の一部です。

イメージングでは、催眠中に潜在意識から湧いてくるイメージを体験していきますが、イメージングにもいろいろな種類があります。エピソード21のイメージングに関する動画では、実在するような現実的なストーリーもあれば、おとぎ話のような世界観のもの、メタフィジカル、アーキタイプのような非物質的、抽象的、霊的なものもあるとお伝えしましたが、前世もその一つということです。

前世療法がイメージングの一種と知って、ちょっとがっかりですか?その必要はありません。内容がなんであれ、潜在意識から湧いてくるイメージには必ず自分自身にとって何らかの意味があります。潜在意識から湧くイメージは、潜在意識からのメッセージだからです。前世であれ、その他のイメージであれ、夢であれ、非常に有効な潜在意識とのコミュニケーションツールと考えたら、もっと活用したくなりませんか?

せっかくの潜在意識とのコミュニケーションツール、ご自身の毎日の生活を、人生をより良くするためにぜひ、ご活用ください!

コメント