時々、「催眠状態では意識がなくなって、その間のことは何も覚えていないの?」という質問をいただきます。
ヒプノセラピーでの催眠状態では、基本的に意識がなくなることも、記憶がなくなることもありませんが、実は、ある特定の状態では記憶が一部なくなることがあります。
今日は、そんな催眠状態の深さのお話です。
スクリプト
毎日誰もが複数回は経験している催眠状態。これは脳波がα波からθ波にあるリラックス状態です。
今までにも何回かお話ししてきましたが、例えばマッサージを受けている時。寝落ちした訳ではないけれど、気づいたら終わっていた・・・というのは催眠状態の良い例です。つまり、顕在意識がちょっと薄れている状態ですね。
瞑想の場合は、意図的に顕在意識を薄れさせるために「考えない」とか「または思考をやり過ごす」ということを行いますが、これは結構訓練、慣れを要します。ヒプノセラピー・催眠療法の場合は、このような訓練や慣れは必要なしに、自然とこの深いリラクゼーションの状態に入ることができるだけでなく、変わることができちゃう!例えばいざという時に実力を発揮できる自分、自信のある自分、着々と目標に近づける自分などになれちゃう!という大きなメリットがついてきます。が、時々、催眠状態にある時に起きることって覚えてないの?という質問をいただきます。
先ほどあげたマッサージの例でも、気づいたら終わっていた、その間の記憶はない訳ですよね?このような質問が湧くのもごく自然なことだと思います。
これは催眠の深さが関係してくることなので、今日はこの点についてお話ししたいと思います。
まず、催眠の深さには基本的に3段階ありますが、ヒプノセラピーでは、催眠状態が深ければ深いほど良い訳ではありません。目的に応じて必要な深さが異なってきます。
まずはhypnoidal 日本語では軽催眠と訳されますが、言葉通り軽度の催眠状態です。次の段階がcataleptic。catalepticとは直訳すると強硬性、つまり硬く強ばるという意味で、中程度の催眠状態になり、最も深いレベルがsomnambulism、直訳すると夢遊病、夢遊性になり、先ほどのマッサージの例は、この最も深い催眠状態です。
先月、被暗示性のお話をしたときに、3つ目のタイプとしてSタイプがあるとお伝えしましたが、実はこのS、somnambulistのSです。Sタイプの人は催眠にかかりやすいとお伝えしましたが、Sタイプの人が皆、夢遊体験を持っている訳ではありません。ただ、被暗示性が高い、催眠状態に入りやすいSタイプの人の中に夢遊体験がある人が多いのは事実であり、それが名前の由来にもなっています。
この最も深い催眠状態である「夢遊」状態に入ると、記憶が飛ぶことがあります。実際に夢遊体験がある人も、自分が睡眠中に動き回っていることは覚えていませんよね。これが最も深い催眠状態でも起こり得ます。実はこの「夢遊」催眠状態はさらに3つの段階に分かれていると言われています。
第一段階では、20%から40%の記憶が飛ぶ、第2段階では約60%、第3段階では80%以上、記憶が飛ぶと言われています。つまり、第3段階の場合は、催眠状態から覚醒した時に、何が起きたのかほぼ何も覚えていないと言うことになります。
また、ここでの「記憶」はあくまでも、催眠状態にいる間に起きた内容のことで、過去の経験を忘れたりなどと言うことは一切ありません。
この最も深い「夢遊」催眠状態ですが、ヒプノセラピーでこのレベルを使うことは実はあまりありません。このように深い催眠状態を必要とするのは、疼痛コントロール、つまり痛みを軽減したり、または麻酔の代わりに催眠を使うような場合です。
そう、アメリカでは一般的に誰もが使うほどではありませんが、出産時に麻酔の代わりに催眠を使うお母さん方が結構いらっしゃいます。歯科医の施術などでも、麻酔の代わりに催眠を使う人もいます。ちなみに、痛みの軽減に催眠を使う場合は、必ず検査の結果、異常が見られない場合、「気持ちの問題、ストレスでしょう」と言われた場合、または医師が催眠による痛みの軽減を許可をした場合のみになりますので、ご注意ください。
いざという時に実力を発揮したい、自信をつけたい、目標を達成したい、人間関係を改善したい、などのさまざまなお悩みについては、顕在意識と潜在意識の足並みを揃える必要があるため、あまりに顕在意識が薄れすぎてしまう「夢遊」催眠レベルはかえって逆効果になります。
つまり、ヒプノセラピーのセッションではそこまで深い催眠状態を利用することはあまりないので、そんなに記憶が飛ぶことはありません。
また、私が多用しているイメージング(イメージ療法)については9月にお話ししましたが、スポークンタイプ、つまり体験しているイメージを声に出して説明してもらう場合は、催眠の深さは軽めになりますが、声に出して説明することで、体験が深まって潜在意識での印象が強まります。と言うのも、以前にもお伝えしましたが、潜在意識には現実と仮想の区別がつきません。潜在意識はイメージで学び、イメージでコミュニケーションを取りますので、潜在意識から湧いてくるイメージについて声に出して説明することで、それはあたかも現実かのように意味を持つからです。
今日の結論。催眠状態では記憶が飛ぶこともあります。でも、それは最も深い催眠状態でのみ起きる現象で、ヒプノセラピーのセッションでこの非常に深い催眠状態まで持っていくことはあまりありません。
コメント